→前回(その1)からの続き
英国式ブラスバンドで吹くためにアップライト・ピストンでコンペイセイティング・システムのテューバ、ヤマハYBB-631をebayで購入したわけだが、これがなかなかの難物であった。しかし大枚はたいて買ってしまった(※)以上はなんとか使えるようにしないといけない。さらに状態からしてリセールバリューは期待できないと思われるので、ここは思い切って俺色に染めてしまおう。
(※30万円くらいの金額というのは楽器によっては「最高の選択」も可能な価格であるが、正直テューバの場合はどうにかまともに使えるレベルのもの、がある、こともある、ぐらいのゾーンである。)
この楽器がどれほど良いのか悪いのかそれとも普通なのかちょっと判断が付きかねているのだが、とりあえず普段使っているカナディアンブラス(楽器ブランド名)のC管に比べるとサウンドもレスポンスもだいぶ劣る。
そこでまずはちょろハゲのラッカーを、ベルから主管のテーパー部分が終わるところまで剥がしてしまうことにした。色んな学校に楽器の指導に行くと、たまにラッカーのハゲたヤマハがけっこう良い音をして吹きやすかったりしていることがあるのでノーラッカー化によってサウンドが改善されることを期待する。(以下基本的にビフォアーや作業中の写真を撮っていないので再現画像が中心になります。)
ラッカーを剥がした部分と残った部分の境目
楽器メーカーによってはラッカーが簡単に剥がれるものもあるようだが、ザ・ジャパニーズ・クオリティ、天下のヤマハのラッカーはかなり強力で普通に溶剤を塗るだけでは剥がれてくれないようだ。そこでいったん家にある卓上型のスチームクリーナーを吹いてラッカーを劣化させる。普通に熱湯をかけてもたぶん同じ効果は得られると思われる。
使用した「塗料はがし液」はアサピペンとニッペの2種があるが、左の青い液色のアサピペンの方が粘性があって使いやすい。コストパフォーマンスは右のニッペの方が上か。ニッペは粘度がやや低めなので器に出してハケで塗る必要がある。
剥がれてきたラッカーをウェスとかで拭き取るのはなかなか大変な作業になる。なので風呂場で作業して浮いてきたラッカーを柔らかい材質のヘラ等(※)で掻き落とし、お湯で一気に洗い流す方法がおすすめだ。(※ゴムヘラは溶剤で溶けてくるのでナイロンのヘラを推奨。あと換気にも注意。)
ラッカーを剥がす時にはある程度(15分くらい)時間を置くのだが、あまり長い間放置するとモロモロの状態で乾いて再び固まってしまう。こうなると剥がすのがさらに面倒になるので、油断せずさっさと作業する必要がある。
ノーラッカーにするとちょっと色が落ち着いてなかなか美しい。無塗装でもそうすぐにサビるものではないようだ。肝心の音の方はダークでソリッド、と目指すイメージに近づいた気はするが、このへんは楽器が良くなったのか単に自分が吹き慣れてきただけなのかちょっと判別し難い。
そして前の持ち主か誰かが施した「妙な改造その2」、2番抜き差し管に付けられたボタン型のウォーターキイ。これが実にお粗末な代物で、ここからボタボタと水が漏れてくる。当然気密性も悪くなっており、バルブを押さえずに管を抜いても「ポン」という音がしないくらいだ。そもそもこんな高い位置からツバを落とそうとする神経が理解できないのだが。(例によってビフォアーの写真を撮っていないのでebayの画像から)
というわけでこれは本当に良い子は真似しないように案件なのだが、バーナーでハンダを溶かしてこのお粗末ウォーターキイを外し、小さく切った銅板をハンダ付けして穴を塞ぐことにする。真鍮でなく銅なのは単にホームセンターで小さい銅板が売っていたからである。
これでだいぶ気分的にすっきりとした。
そして4番バルブ問題。たしかにマウスパイプの移動によって大きく改善はしたが、まだ腕を伸ばして構えるのに若干の労力を要する。そもそもブラスバンドの活動を始める目的は黒い譜面を吹きまくることにあるのだから、バルブを抑える動作はあくまでも快適でなくてはならない。
そこで4番ピストンにアタッチメントを取り付けることを考えた。そのためまずYBB-201用の真鍮製ピストンボタンを入手する。
こういうのは中古で安く転がっているといいのだが、そうそう都合よく出回ってはいないのでebayで新品を購入する。国内のサイトでは売っている所が見つからなかった。送料も含めるとそこそこな出費である。
このボタンにM6のナットをハンダ付けする。ナットのサイズは使う部品によって決まる。このハンダ付け、というかハンダで付けられるようにするためのラッカー剥がしが意外に手強い。なにせ新品のヤマハラッカーなのでバーナーで直接炙ってもなかなか焼けないくらいだ。
この特製ボタンを4番ピストンに取り付け、アタッチメントを作成してボルトで止める。このアタッチメントはホームセンターで売っているステー金具を使って作る。
これをバイスで固定してペンチで曲げる。きれいに曲がるのは穴の空いた箇所なので成形にはある程度の制約がある。ベストな位置に指が来るようにするためには形状や大きさに試行錯誤が必要だ。
ワッシャーにはプラスチックのものを使っている。もちろん普通の金属製でもよいが、プラスチック製の方が弾力でしっかりと止まるようだ。バルブは常にバタバタ動かす部品なのでこの点は重要である。
このように3番U字管の間に指を差し込んで操作できるようにする。これで4番バルブの操作についてはほぼ問題はなくなった。ただしピストンがこの部品ごとしっかりと持ち上げる力を持っている必要があるので、バネを手で引っ張って伸ばして反発力を上げておく。
そもそもヤマハのバネはデフォルトの状態ではあまりにも弱すぎる。貴様本当に音を切り替える気があるのか?僕の場合はすべてのバルブでバネを引っ張って強くしてある。アップライトの縦バスでは少々バネを強くしてもそうピストンが重くはなるということはない。それより戻りの速さの方がよほど重要だ。
この4番アタッチメントは自分としてはかなりのヒットである。何より見た目が超クール。しかしさらなる快適なブラスバンドライフを目指すには「妙な改造その1」で取り外したハンドル問題を解決せねばなるまい。最初はピストンケースに滑り止めを巻いて親指の置き場所さえ確保できれば良いのではと考えていたが、華麗なフィンガリングを実現するためにはやはり手のひらをどこかに乗せる必要がありそうだ。
というわけでホームセンターをうろついて使えそうなものを物色する。結果作ったのは内径20mmの塩ビ管に椅子足キャップ(21mm用)をかぶせただけのブツである。
この塩ビ管はクーラー用で、水道用より薄くて加工しやすく値段も安い(もちろん水道用の塩ビ管で作っても問題はないはず)。塩ビ管を差し渡す場所よりちょっとだけ短めに切って椅子足キャップをかぶせてねじ込む、だけ。ポイントは適正な長さに切ることのみで、うまくいくと意外なほどしっかりと固定でき、なおかつ自由に微調整できる。
このハンドルを持って楽器を持ち上げたりしてはいけないが、この楽器の場合はそれができない位置に固定できたので問題はないだろう。唯一の問題は見た目が極めてダサいことである。このあたりは要改善ポイントだ。
そして最後はごくごく小さなお手軽改造。ピストンボタンのフェルトの代わりに水道工事用の6mmのパッキンをそれぞれ2個ずつ取り付けた。
これは楽器を逆さにして置いた時にピストンから水が滴り落ちてきてフェルトがずぶずぶになってしまうのが嫌なので行った改造である。思えば僕がアップライトピストンの楽器を継続的に使うのは中学校以来なのだが、縦バスってこんなんだっけか?なんだか楽器としてはそもそも無理がある存在のような気がしてきた。
押さえる時の音はフェルトより少々高くはなるが、特にうるさくなるわけではない。とにかくこれで精神衛生上の問題が改善された。
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というわけで以上買った楽器に様々な手を入れてみたわけだが、 念のために言っておくとラッカー剥がしとか本体のハンダをいじるとかの取り返しのつかない改造を自分でやってしまうのは決してお勧めしない。しかし使えそうな部品を探して取り替えてみるようなプチ改造は楽しい上にローコストで演奏性を向上させる可能性がある。もしうまくはまるアイデアがあれば試してみてはいかがだろうか。
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追記:続編できました。
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