英国式ブラスバンドで演奏するために旧型ヤマハYBB-631を中古で買って色々と手を入れてきたわけだが、今回はその続編である。
今回はもはや素人が手を出してもいい範疇は完全に超えてしまい、改造は危険領域に突入している。タイトルの「大改造」にふさわしくなったとも言える。そして無論言わずもがなであるが、良い子は決して真似してはいけません。こちとら失敗しても痛むのは自分の心と懐だけなので、皆さんは無謀な挑戦を遠巻きに呆れながら眺めるのが正しい見方である。
まずはライトなところから。前回作った4番バルブ用アタッチメントの改良。
以前のものは時々中指を挟むことがあるのでこのように外側から回す形にしてみた。人差し指も滑って外れることがなくなり押さえやすくなった。が、それ以上にこの形の方が力の伝わり方が自然になるようでピストンの動きがスムーズになる。なにより形がかっこいい。
ところで通常は抜差管というものは左右で長さに違いがある。抜いた管を差し入れる時に入れやすくするためだが、この楽器はどういうわけだが3番管以外は全部同じ長さになっている。おかげで合奏中に抜差管を抜いて水を捨てるとなかなか戻せなくて焦る。この旧型YBB-631はヤマハのコンペイセイティングBbバスの初代なので随所に設計の甘さが見られるのだが、どうにも気が利かない作りなのである。
この解決法は一つしかない。管の切断である。
「楽器を切る」という神をも畏れぬ行為に怖気づいてかなり控えめな切り方ではあるが、切りすぎると当然ながら音程の調整幅が少なくなってしまう。とりあえずこれだけでも管の抜き差しでいちいち慌てふためくことはなくなった。さて取り返しのつかない「大改造」は実はここからが本番である。楽器の加工に「焼きなまし」を行うことがあるらしい。 真鍮を熱してゆっくり冷ますことで金属内部に溜まったストレスを取るのだという。あくまで感覚的な話だが、この楽器はストレスが溜りまくっている感じがするので焼きなましは効くのではないか。
さっそくバーナーで炙ってみよう。
この作業をしたのは真夏なのでそこそこゆっくりと冷えてくれるはずである。
焼けるといい色になるのが気に入った。
おそらくボコボコに凹ませてゴンゴンに直しまくっているであろうボトムの部分は特に念入りに焼く。ボトムはテューバの音質に最も影響を与える部分でもある。
響きが素直になってきたので最初から時々起こるビリつき、特定の音を吹いた時に起こる異音が余計気になってきた。ショルダーの部分を触ると止まるのでこのガードが犯人だと睨んで外してみたのだが・・・
なんとこれが冤罪であった。真犯人はストラップを取り付けるためのリングで、こちらを外すとビリつきは収まった。
ショルダーガードは無罪放免となったので元の場所に付け直そうとしたのだが、それはどうやら素人には無理な作業と分かり、この楽器はこのままガードなしで生きていくことになった。改めて冤罪の恐ろしさを思い知らされた事件であった。
この楽器は購入前からピストンの手前に本来ある、手を置くためのバーが(おそらく)前オーナーによって取り外されている。前回塩ビ管を使って手のひらを置くバーを作成したのだが、やはりもっとしっかりした構造物が欲しい。しかしこれまでの作業で、真鍮管を加工して取り付けるのはどうやら素人には無理、だということがようやく分かってきた。
そこで異音の下手人であったリングを親指だけ引っ掛ける指掛けにしてピストンケースに取り付けることにした。そのままでは指が入る大きさではないので一部をカットする。
一見綺麗に付いているように見えるが実は何度も位置を変えて付け直しているので裏側はハンダだらけである。通常の指掛けよりタイトだがそのぶん親指がしっかりと止まる。
もっとしっかりしたバーを取り付けたいのはやまやまだが、 そういう構造物はけっこう音に影響を与える。それにフィンガリングには親指さえ暴れないようにホールドすれば問題ないということも分かった。
この楽器の入手当初は音に締まりを与えるためにもっと支柱を増やしたいと思っていたのだが、焼きなましによって音が素直に出るようになると逆に支柱は減らして鳴りを重視した方が良いのではないかと思い始めた。
よく見ると明らかに不要に思える支柱が1番管と3番管に1本ずつある。
これを外してみると予想通り強度的にはほぼ問題は感じない。ただしこれからは1番管だけを持って持ち上げるようなことは慎むべきだろう。そして肝心の音の変化だが・・・
音質には特に変化は感じられない。あら残念、と思ってとりあえず曲を吹いてみる。すると今まで妙に音が外れやすかった、1番管を押さえる真ん中のCがまったく問題なく当たる!そうかお前らのせいだったのか。俺が下手なわけじゃなかったのか。
1番管と3番管の支柱を外したので当然ながら1番と3番は音の抜けが良くなった。そうなると2番が抜け悪く感じる。
よしこの支柱も外してみよう。(支柱を外すのはバーナーで炙ってハンダを溶かすだけだから素人にもできるが、戻すには技術がいるのでもう少し慎重になるべきである。しかしこの時すでに支柱より先に頭のタガが外れてしまっていた。)
残った支柱も端に寄せたほうが良い気がしたので移動させてみた(例によって試行錯誤しているのでハンダがあちこちに付いている)。これによって音の抜けはバルブを押さえても開放音とほぼ変わらなくなった。指掛けやアタッチメントの改良によって機能性が向上したのと相まって細かい音符を吹きたい衝動に駆られる。
ただし構造的にはやはり弱くなっている。2番管のあたりは以前はびくともしなかったが、今では押すと少したわむ。しかし楽器というのは本来そのくらいのものである。YBB-631は学校楽器の縦バスがベースの設計なので異様に頑丈に作ってあるわけだ。
4番管も支柱多すぎである。ちょっと分かりにくいが近い場所に4本集まっている。
なので一つ除去してみた。
ここまで焼きなましと支柱除去&移動によって演奏性が、アタッチメントと指掛けの改良によって機能性が向上した。個人的な感想としては一歩「楽器」に近づいた。
ここで全体写真をお見せするべきなのだが、実は素人工事による試行錯誤はまだ続いており、先が見えない状況に陥っている。続きはまた後日アップすることにしていったんここまでのご報告としたい。→後日
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